一人っ子遠距離介護、私の場合④ デイサービスに行ってもらうのが大変だったこと

退院したとはいえ、心不全で通院は続けなければならない。入院という環境の変化で、認知症も進んでしまった。でも、慣れた家で今までと同じように暮らしたい。娘の私も、出来るだけ自分の生活を守りたい。

 

それをなんとか叶えつつ、かつ安全に生活してもらうためには、出来るだけ「母が一人になる時間を減らすこと」だと考えた。一人の時に、倒れたり具合が悪くなったり、(今は大丈夫だけど)迷子になったりしたら大変だ。

 

誰かがそばにいれば、助けてもらえたり、私に連絡してもらえる。出来るだけたくさんの人に母とかかわってもらおうと思った。それに、たくさんの人と交流を持つのは母にとっても良い刺激になるはずだと思った。色んな人と接したり話したりすれば、楽しいだろうし、心強いだろうし、寂しくないだろうし。

 

というわけで、ケアマネさんと相談してデイサービスに週3回行ってもらうことにきめた。ヘルパーさんに週2回別の日に来てもらい、一日は病院の外来に通ったり美容院に連れて行ったりの用事をたす日にして、日曜は私と夫が母のところに行く日ということで。

 

月・木・土 …デイサービス

火・金   …ヘルパーさん

水     …用事を足す日 (病院に行く、美容室に行くなど)

日     …私と夫が訪問

 

こうすれば毎日誰かかれかに会うわけだから、なにかあってもすぐ発見できるし安心!バッチリだね!だと思ったのだが、ことはそう簡単には進まなかった。

 

肝心の母が「デイサービスに行きたくない」と言い出したのだ。「知らない人ばっかりでいや」「面倒」「とにかくいや」と言って、てこでも動かない。初めの3回くらい、デイサービスのお迎えの人から私に電話があって「お母さん、どうしても行きたくないって言うのですけど…ちょっとお話してくれますか?」ということが続いた。

 

電話を代わった母は「悪いけど、お母さん行かないから!」と必死に訴えるし、最後には涙声になっているし、「わかった。行かなくていいよ。」と言うしかなかった。

 

デイサービスの拒否は珍しいことではないらしい。半分くらいの人が「行かない!」と言って、行くようになるまで時間がかかったり、結局やめてしまったりするらしい。だからだろうか、母が拒否していることをケアマネさんに相談したら「あ~大丈夫ですよ。次回から私が『送り出し』しますから。」と、あっさり言ってくれた。

 

そして驚いたことに、次の時にケアマネさんが家に朝行って、なにをどうしてくれたのだかわからないが、デイのお迎えの人に母を渡し、母は一日デイで過ごして「楽しかった~!」と言って帰ってきたのだ。

 

「いったい、どうやったんですか?」と聞いたのだが「ふふふ」と笑うケアマネさん。別に秘密じゃないのだろうが、真相はわからない。ただ、やっぱりケアマネさんやデイの介護士さんは経験豊富なプロだということだ。だから、母に合った方法で上手にうながしてくれたのだと思う。

 

例えば、昔税理士さんだった人で、どうしてもデイの入り口で拒否して入らない人には「先生、判をおしていただきたい書類があるのですが、中に入っていただけますか?」

と言って入ってもらうという話を聞いたことがある。

 

母の場合はどうだったのかわからないが、のちにデイの人が「お母さんには、プリントを折ったり配ったりするのを手伝っていただいて助かっています。」と言っていたので、そういうアプローチがあったのではないかと思っている。「ちょっと手伝ってもらいたい仕事があるのですが…」と言われれば、どれどれと入っていきそうだし。

 

認知症であったって、人に頼りにされたり役割が与えられたりすれば、張り切って仕事ができる。この当たり前のことを、これからも忘れないようにしたい。